抗生物質で耐性菌のメカニズム なぜ、耐性菌は出現するのか?

抗生物質

 

抗生物質2

 

今、抗生物質が効かない耐性菌の対策として、政府が抗生物質の使用を3割減らす目標を掲げました。

 

耐性菌と言う言葉は聞いたことがありますが、抗生物質の使用と耐性菌の出現にはどういったメカニズムがあるのでしょうか?

 

まとめてみました。

 

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耐性菌とは?

薬剤耐性菌とも呼ばれる細菌のことです。

通常、抗生物質を使用することで細菌は死滅してしまいますが、耐性菌に抗生物質を使用しても死滅するどころか、そのまま生き残ってしまいます。

 

なぜ、耐性菌が出現してしまうのか?

それは、細菌の遺伝子の改変スピードがとても速いからです。

一つの細菌は、次の日には何万倍以上に増殖することもあります。

 

例えば、伝統的な抗生物質としてペニシリンと耐性菌の関連を考えてみます。

ペニシリンは、細菌の細胞壁を構成するタンパク質に結合することでその効果を発揮し、正常に細胞壁を作らせないようにします。その結果、抗菌作用を発揮します。

 

ポイントは、細菌の細胞壁のタンパク質に、ペニシリンがくっつくというところです。

 

しかし、細菌側からしても、黙ってそのままにしておくわけにはいきません。

細菌も生物としての生存するために、少しでも生き延びようと考えます。

細胞壁のタンパク質にペニシリンがくっつくのなら、くっつかないように形を変えてしまえばいいのです。

 

細菌の意志で、タンパク質の形自体を変えるということはすぐにはできません。しかし、交配などによる遺伝子の改変で、ごくわずかな確率だけれどもそういった目的に叶う遺伝子が出来ることもあります。

 

生物は、遺伝子の配列の情報をもとにタンパク質を作ります。

一度その遺伝子配列ができてしまえば、子や孫に対してその情報を譲り渡すことができます。

この遺伝子改変は、染色体上で起こる場合と、プラスミド上で起こる場合があります。

 

プラスミドって何?

プラスミドというのは、細胞核の外にある染色体以外のDNAの名称のことです。

生物の情報というのは細胞核の中にあるものですが、プラスミドは例外的です。

 

通常の生命の活動に必要な遺伝子は含まれていません。

特殊な環境下に置かれた場合、例えば高温状態や極度に乾燥している場合、もしくは、病原性を発揮する場合などに、プラスミドの中にある遺伝子が独自に働き出します。

 

染色体上で遺伝子改変が起こる場合は、同じ種類の細菌に遺伝子情報が受け継ぐことがあります。

 

プラスミド上で遺伝子改変が起こる場合は、違う種類の細菌にまでその遺伝子情報が行き渡ることがあります。

 

先ほどのペニシリンの例を持ち出して、考えてみましょう。

 

 

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ペニシリン耐性の遺伝子改変が、染色体上で起こった場合

この場合は同じ種類の細菌の中だけで、ペニシリン耐性の遺伝子が受け継がれることになります。基本的に他の種類の細菌にまで、ペニシリン耐性の遺伝子が移動することはありません。

 

具体的な例としては、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(通称:MRSA)があります。

メチシリンというのはペニシリンと同じペニシリン系の抗生物質です。

通常の黄色ブドウ球菌ならば、メチシリンを投与すると死滅してしまいますが一度耐性を獲得したMRSAは死滅することはありません。

 

ペニシリン耐性の遺伝子改変がプラスミド上で起こった場合

この場合は違う種類の細菌同士でも、ペニシリン耐性の遺伝子が受け継がれる可能性があります。とても厄介な状態です。

例えるなら、黄色ブドウ球菌がペニシリン耐性を獲得すれば、プラスミドを介して大腸菌にまで伝達されるようなことです。

 

他の種類の細菌にも、情報のキャッチボールのように色々な抗生物質に対する耐性情報が渡されてしまうと、いずれは細菌に抗生物質が効かなくなる事態に陥る可能性があります。

 

耐性菌を出さないためには

抗生物質と細菌の接点を無くすことが大切です。

抗生物質を使用することで、それに対して耐性がある細菌を生き残らせる結果になります。

 

したがって、医師側が安易に処方しないようにするために、政府の方で制限をかけることを検討しているようです。

 

また、患者側も正しい知識を持ち、安易に抗生物質の処方を求めないようにすることも大切です。

 

抗生物質を飲まなければいけない時は?

ただし治療上、どうしても抗生物質を服用しなければいけない場合もあると思います。

そのような時は、定められた用法用量に従い、正しく薬を飲みきることが大事です。

 

症状が良くなれば抗生物質は飲まないようにしようという考え方をする人が、中にはいると思います。

 

そのように抗生物質の使用を途中で中断すると、初めに抗生物質が少し効きにくい細菌が出現します。出現というよりかは、抗生物質という環境の変化に対して、生き残れる細菌が生き残ったというのが正しいです。ダーウィンの進化論みたいですね。

 

そして次には、抗生物質が効きにくい細菌が生き残って、最終的には抗生物質が全く効かない細菌だけが、生き残る結果となります。

 

かなり極端な言い方にはなりますが、抗生物質は飲むならばしっかり最後まで飲む。

飲まないならば、最初から飲まない。

このぐらいの心構えがないと耐性菌の増加を抑えることは、難しいのかもしれませんね。

 

 

まとめ

  • 抗生物質を使用することは、抗生物質に対して抵抗する細菌の自然淘汰をおこなっているのと同じことになる。
  • 抗生物質の耐性が染色体上の遺伝子に出現すると、同一の細菌内で情報が広まる。
  • 抗生物質の耐性がプラスミド上の遺伝子に出現すると、異種の細菌内でも情報が広まる。
  • 耐性菌の増加を減らすためには、抗生物質を使用するのを少なくするのが大切。
  • どうしても、抗生物質を飲まなければいけない時は、しっかりと飲み切るのが大事。

 

 

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