「私が飲んでいる抗生物質って強いのかな?」
「抗生物質の強さって、なかなかわからない。」
「抗生物質は、菌の種類によって効果が違います。っていうけど、本当にそうなの?」
など、色々と知りたいことがありますよね。
しかも、インターネットで検索してみてもはっきりしない部分が多いです。
そんな疑問を解消するべく今回は、一番気になる抗生物質の強さについてまとめてみました。
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一般的によく言われる抗生物質の強さ
強い | 抗生物質の種類 |
↑ | ニューキノロン系抗生物質 |
↑ | セフェム系抗生物質 |
↑ | ペニシリン系抗生物質 |
↑ | テトラサイクリン系抗生物質 |
↑ | マクロライド系抗生物質 |
弱い |
その理由は、様々です。
- ニューキノロン系やセフェム系抗生物質は、効果が殺菌的だから強い。
- テトラサイクリン系やマクロライド系抗生物質は、効果が静菌的だから弱い。
- 1日3回の薬よりも、1日1回の薬だから強い。
他のインターネット上のサイトを見ていると、このような見解があります。
でも、これって本当なのでしょうか?
私なりに検証してみました。
5つの抗生物質の強さを、比べてみた。
専門家向けのサイト「抗菌薬インターネットブック」を参考にさせて頂きます。
MICという値が小さければ小さいほど、少量で細菌の増殖抑制効果が高いことを示しています。
比較対象とするのは、5つの種類の抗生物質
- ペニシリン系抗生物質
- セフェム系抗生物質
- マクロライド系抗生物質
- テトラサイクリン系抗生物質
- ニューキノロン系抗生物質
です。
比較する抗生物質が完全に同一ではないことや、MICの値が標準菌と臨床菌が入り混じっているため、強さがわかりにくい面があると思います。
あくまでも、今回の目的は、
- 個々の菌、抗生物質によって強さが変化する。
- 先の表の通り、ニューキノロン系抗生物質が常に一番強いというわけではない。
ということを説明することに焦点を置いています。
マイコプラズマに対する抗生物質の強さ
マイコプラズマとは、マイコプラズマ肺炎を引き起こす原因です。
細胞壁がないのが特徴です。
抗生物質の種類 | 成分名 | MIC |
---|---|---|
マクロライド系 | クラリスロマイシン | 0.00625~0.0078 |
ニューキノロン系 | ガレノキサシン | 0.0313 |
テトラサイクリン系 | ミノサイクリン | 0.1 |
ペニシリン系 | – | – |
セフェム系 | – | – |
今回、比較した中では、MICの値が一番小さいマクロライド系のクラリスロマイシンが一番強いという結果になりました。
ニューキノロン系の方が強いと思っていたので、意外でした。
ちなみに、ペニシリン系とセフェム系の抗生物質は、マイコプラズマに全く効きません。よって、効果はないということで、空欄にしています。
マイコプラズマについて、さらに知りたい方は、
などの記事があります。
肺炎球菌に対する強さ
肺炎球菌とは、肺炎や中耳炎を引き起こす細菌です。
グラム陽性菌で、細胞壁をもちます。
抗生物質の種類 | 成分名 | MIC |
---|---|---|
セフェム系 | セフカベンピボキシル | 0.006~0.025 |
マクロライド系 | クラリスロマイシン | 0.025 |
ペニシリン系 | アモキシシリン | 0.03~0.05 |
ニューキノロン系 | レボフロキサシン | 0.78 |
テトラサイクリン系 | ミノサイクリン | 12.5 |
今回は、セフェム系の抗生物質が細菌の増殖を抑える効果が一番強いということがわかりました。
セフェム系やペニシリン系の抗生物質は、元々グラム陽性菌に対して抗菌力があります。そのためか、高い抗菌力を発揮しています。
ニューキノロン系も抗菌力がありますが、今回比較してみると少し弱いという結果になりました。
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大腸菌に対する強さ
大腸菌とは、大腸に住む細菌です。
普段は無害ですが、尿道に入り込むと膀胱炎の原因になります。
グラム陰性菌で、細胞壁があります。
抗生物質の種類 | 成分名 | MIC |
---|---|---|
ニューキノロン系 | レボフロキサシン | 0.025 |
セフェム系 | セフカベンピボキシル | 0.10~0.39 |
テトラサイクリン系 | ミノサイクリン | 0.4~6.25 |
ペニシリン系 | アモキシシリン | 1.56~6.25 |
マクロライド系 | クラリスロマイシン | 25~100 |
今回は、ニューキノロン系抗生物質が細菌の増殖を抑える効果が一番強いということがわかりました。
ニューキノロン系は、元々グラム陰性菌に抗菌力を持ちます。そのためか、高い抗菌力を発揮しています。
セフェム系は、世代を経ることにグラム陰性菌にも抗菌力を発揮するように、開発されてきました。そのことが確認できますね。
MICの値が小さいからといって、それだけでは決まらない。
今回の検証では、MIC数値で比較をしました。
しかし、臨床の場では必ずしもその限りではないようです。
理由としては、MICの値が少し高くても十分な血中濃度が確保できれば、抗菌効果があるからです。
例えるなら、洗濯と洗剤の関係です。
2つの洗濯洗剤があるとします。
- A.ジェルボール型の洗剤 1つぶの少量で汚れが良く落ちる。
- B.普通の粉末状の洗剤 ある程度の量を入れて汚れを落とす。
どちらの洗剤が、より少量で汚れが落ちますか?
と聞かれたらAと答えます。
しかし、どちらの洗剤が、汚れを落としますか?
と聞かれたら、AとB両方どちらも落としますと答えます。
Bの洗剤でも、十分な使用量があれば汚れが落ちますよ。
とそんなイメージです。
まとめ
- 抗生物質の強さは、原因菌によって異なる。
- グラム陽性菌には、ペニシリン系やセフェム系の抗生物質がより有効なことがある。
- グラム陰性菌には、ニューキノロン系の抗生物質がより有効なことがある。
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