「ペニシリン系抗生物質って、どんなグループに分かれるの?」
「ペニシリンって昔に作られたものと、最近の物で違うの?」
「同じペニシリン系抗生物質でも、何が違うの?」
など、抗生物質で気になることが多いと思います。
今回は、ペニシリン系抗生物質の一覧と歴史についてまとめてみました。
病院でもらうことが多いのは、第3グループ以降になると思います。
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ペニシリン系抗生物質の特徴
- 元々、グラム陽性菌に対して抗菌力がある。
- グラム陰性菌に対しては、抗菌力があるように開発されてきた。
- ペニシリン系の抗生物質は、おおまかに5つのグループに分けられる。
- 第3グループ以降のペニシリン系抗生物質が、病院でよくもらうことが多い。
グラム陽性菌と陰性菌
グラム陽性菌とは、グラム染色で染まる細菌の種類です。
グラム陰性菌とは、
2019/5/11訂正
グラム染色で染まらない細菌の種類です。 → 赤くあるいは青く染まる細菌の種類です。
グラム陽性菌は濃紫色、グラム陰性菌は赤色に染まって見える。
グラム陽性菌が引き起こす病気は、
- 伝染性膿痂疹(とびひ)
- 上気道炎(かぜ症候群)
- 溶連菌感染症
- 肺炎
などです。
グラム陰性菌が引き起こす病気は、
- 膀胱炎
- 上気道炎(かぜ症候群)
- 副鼻腔炎
- 日和見感染
などです。
もっと詳しく知りたい方は、
の記事で説明しています。
ペニシリン系抗生物質のグループ
第1グループ
- ベンジルペニシリン(商品名:ペニシリンG、バイシリンG)PCG
グラム陽性菌に有効。陰性菌に無効。
最初にできたペニシリン系の抗生物質です。
ペニシリンGは、胃酸で分解されて効果がなくなるので注射で投与される。
細菌が作る酵素でβ-ラクタマーゼ(ペニシニナーゼ)というものがある。
この酵素は、ペニシリンを分解する働きがあり、ペニシリン系抗生物質は分解されて効果がなくなってしまう。
しかし、今現在も連鎖球菌、肺炎球菌、髄膜炎菌に有効で、治療で使われる薬である。
第2グループ
- メチシリン DMPPC
- クロキサシリン MCIPC
グラム陽性菌に有効。陰性菌に無効。
β-ラクタマーゼ(ペニシニラーゼ)で分解されにくいように改良したペニシリン系抗生物質。
現在発売中止で、今後も病院でもらうことはない抗生物質。
その理由は、メチシリンが全く効かない黄色ブドウ球菌(MRSA)が出てきてしまったから。
MRSAは、メチシリンだけでなく全てのβーラクタム系(ペニシリン系、セフェム系)抗生物質が無効。
発売当初は、黄色ブドウ球菌はグラム陽性菌であり、メチシリンがよく効いていた。
しかし、細菌が変異して体の構造を変化させて、メチシリンがくっつかない形に変わってしまった。このために、メチシリンが効かなくなった。
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第3グループ(広域ペニシリンで緑膿菌に無効)
- アンピシリン(商品名:ビクシリン、ペントレックス)ABPC
- アモキシシリン(商品名:サワシリン、パセトシン、アモリン、ワイドシリン)AMPC
- バカンピシリン(商品名:ペングッド)BAPC
- タランピシリン(商品名:アセオシリン)TAPC
- レナンピシリン(商品名:バラシリン)LAPC
- シクラシリン(商品名:バストシリン)ACPC
- ピブメシリン(商品名:メリシン)PMPC
- アスポキシシリン(商品名:ドイル)ASPC
発売当初は、グラム陽性菌とグラム陰性菌のどちらにも有効だった。
緑膿菌には初めから無効。
現在は、グラム陰性菌の一部(インフルエンザ菌など)に有効である。
多くの種類の細菌に有効だったので、広域ペニシリンと言われるが、今は主にグラム陽性菌に対して使う抗生物質になった。
第4グループ(広域ペニシリンで緑膿菌に有効)
- ピペラシリン(商品名:ペントシリン)PIPC
- カルベニシリン(商品名:パイオペン、グリペニン、ゼオペン)CBPC
- スルベニシリン(商品名:リラシリン)SBPC
- チカルシリン(商品名:チカルペニン、モナペン)TIPC
グラム陽性菌とグラム陰性菌の一部、緑膿菌にまで有効になった抗生物質。
緑膿菌とは、多くの抗生物質に抵抗を示しやすい菌。
日常的にいる菌で通常は問題はないのですが、抵抗力が落ちた人や院内感染などが起こると問題になる菌です。
第5グループ(広域ペニシリン+βーラクタマーゼ阻害剤)
- アンピシリン + クロキサシリン(商品名:ビクシリンS)ABPC/MCIPC
- スルタミシリン(アンピシリン+スルバクタム)(商品名:ユナシン)ABPC/SBT
- アンピシリン + スルバクタム(商品名:ユナシンS)
- アモキシシリン + クラブラン酸カリウム(商品名:オーグメンチン、クラバモックス)AMPC/CVA
- ピペラシリン + タゾバクタム(商品名:ゾシン)PIPC/TAZ
グラム陽性菌とグラム陰性菌の一部に有効な抗生物質。
第3グループや第4グループの広域ペニシリンに、βーラクタマーゼ阻害剤を合わせたものです。
βーラクタマーゼ阻害剤とは、ペニシリン系抗生物質を分解してしまうβーラクタマーゼの働きを邪魔する成分です。この成分を合わせることで、通常では分解されてしまうペニシリン系抗生物質を安定化させて、抗菌作用を発揮します。
ちなみに、ユナシンとユナシンSの違いについては、
ユナシン | 錠剤 | 体の中で分解されると、アンピシリンとスルバクタムが出てくる。 |
ユナシンS | 注射剤 | 薬の成分の中に、アンピシリンとスルバクタムが分かれて入っている。 |
ユナシンは、アンピシリンとスルバクタムを結合して、スルタミシリンという名前になっています。有効な抗生物質の成分は、アンピシリンで同一です。
まとめ
- ペニシリン系抗生物質は、主にグラム陽性菌に有効な抗生物質。
- 開発が進むにつれて、一部のグラム陰性菌まで効くようになってきた。
- 病院でもらう機会が多いのは、第3グループのサワシリンなど。
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コメント
わざわざ貴重な時間を割いて、ご指摘ありがとうございました。