抗生物質の選択基準 医師なら必ず知っている抗菌スペクトルとは?

抗生物質の選択基準とは 抗生物質

 

「お医者さんってどういった基準で、抗生物質を決めるの?」

「抗生物質と細菌の相性ってあるの?」

「抗生物質の抗菌スペクトルってなんのこと?」

など、色々な疑問があると思います。

今回は、【抗生物質の選択基準 医師なら必ず知っている抗菌スペクトル】について解説します。

 

 

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抗菌スペクトルとは?

抗菌スペクトル表3

この表は、データを元に私が作成しました。

 

簡単に言うと、抗菌スペクトルとは、抗生物質と細菌の有効性のことです。

抗菌スペクトル表といって、この表を用いて抗生物質の有効性を検討します。

横には抗生物質の名前が書いてあります。

縦には病原菌の名前が書いてあります。

縦軸と横軸が交わるところに「〇」の表記があれば、抗生物質は病原菌に基本的に有効という意味です。

 

一つの抗生物質が、数多くの細菌に効けば、抗菌スペクトルが広いと言われます。逆に、限られた細菌にしか効かない場合、抗菌スペクトルが狭いと言われます。

 

例えば、抗生物質のサワシリンが溶連菌(連鎖球菌属)に有効か調べてみます。

サワシリンの抗菌スペクトル

表のサワシリンの行と連鎖球菌の列が交わるところを探して、「〇」か空欄かを見るわけです。ちなみに答えは「〇」なので、抗生物質のサワシリンが溶連菌に有効ということがわかります。

 

ちなみに、私が作った抗菌スペクトル表は、全ての抗生物質と全ての病原菌を網羅しているわけではありません。なので、お探しの抗生物質や知りたい病原菌が見つからない場合も多々あると思います。簡易的に説明のために作ったものなので、ご了承ください。

 

 

余談ですが、この表を作っている時に【マリオのピクロス】をやっているかのような錯覚を覚えました(笑)ピクロスとは、表の縦軸と横軸に数字が書いてあって、指示された場所をハンマーで削るパズルゲームです。見事指示通りに削りきることができると、一つの絵が浮かび上がってきて、満足感を高めてくれます。今回作った抗菌スペクトルの表が何かの絵に見えたら面白いと思ったのですが、そんなことはありませんでした。

 

抗菌スペクトル表の欠点

簡単で直感的にわかりやすい抗菌スペクトルの表ですが、欠点もあります。

それは、病原菌の抗生物質に対する耐性までは考慮されていないことです。

 

例を出して説明します。

ペニシリン系抗生物質のペニシリンGは、ブドウ球菌属に当初は有効でした。しかし、その抗生物質を使い続けることによって、ブドウ球菌の中にペニシリンGに対して抵抗性を示すものが出てきたのです。

  • ペニシリンG × ブドウ球菌 = 当初は有効。
  • ペニシリンG × ブドウ球菌 = 無効な例も出てきた。

ということは、抗菌スペクトルの表では「〇」でも、実際に抗生物質を飲んでも効きにくい例があるということです。非常に見やすい表なのに、その通りに使って効かないのは問題ですよね。

 

 

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抗菌スペクトル表の使い方

つまり、抗菌スペクトルの表の使い方としては、抗生物質の視点から見て、病原菌に効く可能性があるかということを判断する指標ということです。

実際には、病原菌の視点からも、抗生物質に対する耐性も考える必要があります。

 

以前の【抗生物質の強さ比較 抗菌力はどの種類の抗生物質が一番強いのか?】の記事の中で、M I C という値が低ければ低いほど、抗生物質が効くと書きました。

 

つまり、M I Cなどの他の要素も考えつつ、抗生物質を使う必要があるわけです。

 

マイコプラズマを例に考えてみましょう。

まずは、抗菌スペクトルの表で、マイコプラズマの欄を見てみると…。

マイコプラズマと抗生物質1

 

抗菌スペクトルの表で、「○」がついているものは、クラリス、クラリシッド、ルリッド、ジスロマック、ミノマイシン、ジェニナックです。でも、有効性はあってもどの程度抗菌力を示すかは、わかりません。

続いて、MICの値を用いて考えてみます。

 

マイコプラズマに有効な抗生物質

抗生物質の種類 商品名 成分名 MIC
マクロライド系 クラリス

クラリシッド

クラリスロマイシン 0.00625~0.0078
ニューキノロン系 ジェニナック ガレノキサシン 0.0313
テトラサイクリン系 ミノマイシン ミノサイクリン 0.1
ペニシリン系  –
セフェム系  –

抗生物質の強さ比較 抗菌力はどの種類の抗生物質が一番強いのか?】より改変

MICを指標とした場合は、クラリスやクラリシッドが一番効果が期待できるということになります。

 

ただ、病原菌の耐性は日々変わっています。

今現在では、抗生物質のM I C が変わって、有効性の順位も変動しているかもしれません。

臨床の現場では、常により新しい情報によって、抗生物質の治療が変化しているのです。

 

 

抗菌スペクトルの表を見て、やって欲しくない事

今回抗菌スペクトルの表を作りましたが、絶対にやって欲しくないことがあります。

それは、薬に対する深い知識がない方が、この表だけの情報をもとに自己判断で抗生物質を飲むという行為です。

 

一例を挙げます。

  • 抗生物質のクラリスが家にある。
  • 自分は、性感染症のクラミジアの心当たりがある。
  • 抗菌スペクトル表では、クラリスはクラミジア属に有効となっている。

このときに、医師の指示なしに自己判断だけで、クラミジアの治療のためにクラリスを服用するのはやめてください。クラミジアの耐性を考慮しなければ治療の効果が得られないだけでなく、思わぬ副作用が出る危険性があります。

 

医師は、文献上のデータだけでなく、地域の流行性や自らの経験なども治療の際に考慮しています。

例えばの話ですが、A保育園でマイコプラズマ肺炎が流行っていて、その治療にはマクロライド系よりもニューキノロン系の抗生物質の方が良く効いたなとか。最近、性感染症が増えてきたけどもクラミジアの治療には、やっぱりテトラサイクリン系が効くなぁとか。

治療をしていないと、得られない情報があるのです。そのような面からも専門家の診察を受けることは有用なのです。

 

まとめ

  • 抗菌スペクトル表は、抗生物質と病原菌の相性を示す表。
  • 抗生物質が、どの病原菌に効果を発揮するかがわかる。
  • 臨床の現場では、抗菌スペクトル表+耐性菌、地域の流行性なども考慮して抗生物質が決められる。

 

 

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